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5.定式・定勢(ディンシー)

自分の身体は使いなれているが、注意深く扱わないとケガをする。

身体をリラックスさせるとともに集中し緊張を保つことが大切である。

 

  リラックス = 鬆 ←×→ 懈 =ダラケル

  緊張    = 緊

 

正しいリラックスと正しい緊張を保つことが大切である。

立っているとき、身体は、全身がリラックスすると言うことはない。上半身をリラックスさせても足は体重を支えるための緊張を生じる。

 気功で無極樁でいるとき、上半身を、これ以上緩めることができないところまでリラックスさせてから、両手を胸前まで上げて行き、そこで再び上半身をリラックスさせる。このような練習を繰り返すことで、リラックスの仕方や、リラックスがどの程度できているかを知ることが出来るようになる。

 太極拳の動きの中で、1つの技、例えば、野馬分鬃(イェマーフェンゾン)において、2か所動きが静かになる(重心が静止する)ところがある。その1つは、片足で立った時、もう1つは、左弓歩のときに、左手を大きく開いて型が終わった時である。

この、型が終わった時のことを定式あるいは定勢という。定式の「式」は動作の中の型のことを言い、定勢の「勢」は動作の中の勢い(エネルギー)をいう。

 この2か所の動作が静かになったときに、上半身を十分にリラックスさせることが重要である。十分なリラックスができれば、続く動作が自然と発生してくる。すなわち、リラックスしたなと感じた時が動き出すきっかけである。このことを心がけると、緩やかな動き(緩動)、柔らかな動き(柔動)、軽やかな動き(軽動)が出来るようになる。

 このリラックスをするときに、始めのうちは、動きが止まってから力を抜いてリラックスして良いが、上達するにつれて、動きが止まる少し前からリラックスを始め、動きが止まった時には十分なリラックスができているようにする。そうすれば、リラックスしきったところで次の動きのきっかけが出てくるので、全体として動きが止まることはなくなり静かになる。

 そうは言っても、動きを継続するために定式を意識しないで定式を抜いて次に進んではいけない。たとえば、倒捲肱(ダオジュェンゴン)の定式は、後ろの手を前に押し出しながら、前の手を、手のひらを上にして丹田まで引いてきた瞬間である。この時点では目は正面をみている。前から引き下ろした手が丹田でとどまることもなく、首は後ろに回り、目も後ろに見るように連続した動作は、スムーズではなく、定式を無視した間違った動きである。定式を無くしてはいけません。

 

 定式、定勢は、心や体の勢いが落ち着いた時であり、改めて動き出す起点である。定式を意識し、そこでリラックスさせることを心がけましょう。