普通に「足を上げてください」と言われると、腿(もも)に力を入れて引き上げようとします。何回か繰り返すと腿はすぐに疲れてきます。先生に、「膝を上げてください」と言われました。すると、膝を意識して膝だけを上げようとします。これは楽に、しかも、「足を上げてください」と言われた時よりも膝が高く上がりました。これはどういうことでしょうか。
「足を上げてください」と言われると、私たちは太腿を上げようとして、腿の筋肉を使うのだそうです。これが、足を疲れさせるのです。「膝を上げてください」と言われると、意識が膝に行き、あとは身体が膝を上げるのに任せるようになるようです。この時、身体は、大きな筋肉である大腰筋を使います。この大腰筋は所謂インナーマッスルで、私たちの意識で動かそうとするのは難しい筋肉です。身体が必要だと思った時に動かすので、私たちが出来ることは、身体に必要だと思わせることです。それが「膝をあげる」ということのようです。
太極拳の動作の中での膝の動きについても、いろいろと教わりました。
○野馬分鬃(イエマーフェンゾン)など前に出るとき
左足前の弓歩(ゴンブ)から体重を中央に戻し、身体を回転させた後、
①右足の踵を上げる
②右足の膝を少し上げ、足を中に浮かす
③右足を、膝で折りたたむ
④右足の膝を身体の前に運ぶ
⑤右足の膝を伸ばす
⑥右足の踵をつき、体重を前に運ぶ
これで、右足前の弓歩になる。
○倒捲肱(ダオジェンゴン)など後ろに下がるとき、
右足に体重を乗せ、左足が前にある状態から
①左足の膝をあげる
②左足を膝で折りたたむ
③左足を後ろに下げる
④左足の膝を伸ばしてつま先をつく
⑤体重を左足にかけながら踵をつく
この間に、身体が回転して右足前の倒捲肱になっている。
これらの動作を行う時に、「膝を動かす」ことに意識を集中すると、足が軽く動くことを体験したのです。