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42.鬆動

 悪い姿勢をとったとき「いやな」感じがするようになること、厳密に言えば「いやな感じ」を感じられるようになることが大切です。身体が「いやな感じ」をしているのに、それを感じ取れないで、「痛い」思いをして初めて感じ取るのは、既に遅いのです。「痛い」思いは既に身体のどこかを痛めているからです。「いやな感じ」が感じられるようになるためには、ゆっくり動作することだと教わりました。ゆっくり動くと、副交感神経が働き、注意が全身に張り巡らされるようになるそうです。

 

 この練習には、落ち着いて、リラックスして腰を落とすことを、動作の始まりにすることどそうです。この動作は身体を緩め、身体にかかっている各種のブレーキを外すことに繋がります。ブレーキを外して動き始めるので、力をつかうことはありません。動く前に「ホッ」として、動きだす、これを「鬆動」(ソンドン)と言うそうです。身体を緩めると、筋肉を使いませんので、関節の動きを意識することが出来るようになり、これが正しい動きにつながるのだそうです。先生は、たとえ話として、折り紙の話をしてくれました。折り紙を折るときに、何に気を付けるか、紙の「端と端」をきちんと重ねるとか、重ねた後は「折り目」を正しく着けることが大切です。この「端」とか「折り目」は、人間の身体で言えば指先や関節にあたります。決して筋肉ではないのです。関節の位置が正しければ、筋肉の力を使わなくても人間は立っていることができるし、動くこともできるのです。使うのは、地球の重力です。

 

 人間の背中には、多くのツボがあります。これらのツボは、それぞれ臓器と関わりを持っています。背中を固くすることは、ツボの働きが悪くなり、交感神経を刺激して、臓器への信号の流れを悪くすることです。背中を柔らかくすることは、臓器への信号をながれやすくすることです。背中を大切にしましょう。背中を緊張させてはいけません。背中をゆるめることは、全身を緩めることに繋がり、「鬆動」の基本動作のようです。