· 

46.ホッとする

 「易有太極」(易に太極あり)という言葉があります。「太極は陰陽の母なり。」とい言葉があるように、太極とは陰陽がはっきりする前の何もない状況です。「易」とは将来を予測する事であり、将来起きる変化を予測すると言う意味ともとられています。その易に太極があるということは、変化の前には何もない状態があるということと考えることができます。

 

 太極拳では、いろいろな動きをしますが、それらの動きを始める前に「太極」になりなさいということになります。動きの中で「太極になる」と言うのは何でしょうか。先生は、それを「全身の力をぬいてホッとすることだ」と教えてくれました。起勢で両手を挙げる時から、手を挙げる前に全身の力を抜いてホッとした状況をつくることだと言われました。簡化24式を一通りする間に、どれほど多くのホッとする必要があったでしょうか。とても長い長い時間でしたし、自然にゆっくりでないとできないことを感じました。

 

 難しい言葉で言えば「心静体鬆」ということでしょう。太極拳の勉強は、太極を学ぶことですから、動きを学ぶのではなく「体を緩めてホッとすることが出来るようになること」を学ぶものなのだと改めて知らされました。そして、身体を動かそうとするのではなく、自然に体が動くようにすることだと言うことも教わりました。錬功の「扶膝托掌(フシトゥオザン)」という右手を左膝の内側に着け左手を頭の上にあげる動作ですが、左を上げるのではなく「上がるようにすること」なのだそうです。どうするか。腰を落とすとその反動で上体や頭が上に上がります。その時に左手も一緒に上げて行けば自然に手は上がるということです。先生は「やろうとする気持ちを減らすと、動作ができるようになる。」と言われました。練習あるのみです。