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50.前虚后実

私たちは、ほとんどの場合、身体の前面を中心として行動しています。意識は前面を中心に持たれ、動きも前面に置いて行われています。このため、身体は前かがみ、前のめりになり、身体の重心は前にかかるようになっています。その状態で体が倒れないように維持するために、身体の後面は、筋肉を縮めて緊張状態を継続するようになってしまっています。身体の後ろ側には脊椎がありますが、脊椎は身体を曲げることが出来るようにいくつもの骨(椎骨)の集まりで出来ており、椎骨と椎骨の間は椎間板という柔らかい物があってクッションの役割をしています。身体を支えるために身体の背面に力を入れている状況は、このクッションを上下ではさんで押しつぶそうとしている状態なのです。これが血のめぐりや気の巡りを悪くしている原因なのだそうです。

 

 このような状態になることを避けるためには、身体を真っ直ぐにし、意識を背中に持って行き、背中を緩めることです。身体の前面を「虚」にし、背面を「実」にすることで、前虚后実と言うそうです。その練習の第一歩として尾閭中正を心がけることであると教えられました。身体の動きを、背面を中心として動くようにすることです。身体を右に向けようとするとき、身体の前面を右に回すのではなく、身体の背面を左に回すのです。このような意識を持って、雲手(ユンショウ)の練習をしました。両足に重心があるときは背面を中心に動かすことは簡単にできましたが、体重を移動させ、片足で立つことをやろうとすると、前面を忘れて背面だけで行うのはなかなか難しいものでした。簡化24式を、背面を意識して行うときに、先に習っていた尾閭中正や仙腸関節の動きなどを思い出しながら行うと比較的楽に背面を意識しての動作ができました。それぞれの教えは一つに繋がっていることを実感した練習でした。