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59.リラックス

太極拳をしている間、私たちは心と体の対話をしています。通常、私たちが動く時は、主には身体への命令で、身体の言うことを聞くこと、すなわち、身体の各部の状態を認識することは、あまり行いません。

私達の一番普通の指令は、筋肉に対して「縮め」という命令を出すことです。

筋肉に対して「緩め」という命令はできません。筋肉を緩めるのは重力の仕事なのです。私たちは、筋肉に対して「縮まなくても良い」という命令をするのがやっとできることなのです。このとき、身体はリラッススしています。

 拍動が一定であるという状態は、リラックスしているわけではないそうです。拍動は呼吸をするだけで変動し、息を吸う時、交感神経が働き、息を吐く時、副交感神経が働くので、拍動が一定であるということは、自律神経が働いていないということになるから、リラックスしているとは言えないのです。そして、

リラックスしている時、身体の軸(重心線)が自然に出来てくると教えられました。

 

 私たちは、ひと区切りの動作の最後で、動きを止めます。これは、身体の動きにブレーキをかけることです。

 たとえば、膝の力を抜いて曲げるのを止める(例えば、起勢で体を沈めたとき)。この状態は自転車のブレーキをかけて止めた状態と同じです。まだ、ブレーキはかかったままの状態です。この状態から、止めていた力をぬいて、止まった状態とします。これは、ブレーキをかけて止まったあと、ブレーキをかけたままの状態から、ブレーキをゆるめる働きです。坂道でなければ、自転車はブレーキを離しても止まったままでいます。この力を抜いた状態がリラックスの状態で、身体に軸ができ、次の動作にスムーズに入れるのだと教わりました。

 

 また、(偏って沈めば、即ち随う)という言葉も教わりました。

平らな板の上にボールが置かれているとします。ボールは中心にあって動かない。

片方を低くすると、ボールは低い方へ動いていきます。

身体でも同じことが言えます。行きたい方を低くすると体は自然にそちらの方へ動ごいていきます。力を使わなくても良いのです。

 これを「偏沈則随」というそうです。実感してみたいと思いました。