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61.気貼背(気を背中に貼る)

 私たちは、無意識に、前に倒れそうな形(態勢)をつくって、倒れまいとして足を前に出すというやり方で歩いています。この姿勢は、背中を固くし、背骨の本来の機能である「身体を自由に動かすこと」を妨害しています。背骨の周りを強くすると、背中の神経が働かなくなるという状況をひきおこします。

 身体をリラックスさせるうえで一番大切なことは、視線です。緩やかな上り坂を歩いている時のように、少し上を見るようにするのが、一番リラックスする状態であると教えられました。頭蓋骨を横から見ると、頭の部分と顎の部分とに大きく2つに分けることが出来ます。顎の部分を取り除いた頭の部分において、その骨の下の部分は少し後ろが上がっています。その下の部分を水平にすると、頭全体が少し上を見るようになります。この状態が、一番首に負担をかけない状態であるという説があります。

 次に、背中の形について説明を受けました。帆掛け船が前から風を受けた時、帆は後ろに膨らんで張っています。私たちも、身体の前から風をうけて、帆と同じように体が膨らむ、即ち背中が後ろに膨らむのを感じるようになることを求められました。先生は、私たちに両手をあげ、前から風を受けて、手は左右に大きく広がり、自分の気が背中に張り付いていることを感じるようにと言われました。これを、気貼背(気を背中に貼る)というと教えてくれました、身体を一本の弓と考え弓がたわむように、身体全体がたわむようになるよう求められました。ただし、前かがみにならないよう、頭、背筋はマストのように真っ直ぐにしておくことが肝要であるとも教えられました。そして、力もエネルギーも背中から生じるのだと教えられ、野馬分鬃(イエマーフェンゾン)の動作を使って、どのタイミングで背中が張る状態になるのかを練習しました。左足前の弓歩から体を緩めて重心を後ろに移動する時が最初の大きく背中を張るタイミングです。続いて左足に乗って右足をだし左手で抑え、右手で前に打つ(払う)動きで両手が広がっていくタイミングで背中を張るということでした。

 

目線と背中の張りに気を付けて簡化24式を行いましたが、終わって感じたことは自分の手が全く見えなかったことでした。

 

また、先生は次の8つの言葉を次のように書かれました。

   開  合

   呑  吐

   昇  降

   退  進

横の組み合わせは反対の言葉が書かれています。

縦の組み合わせは同時に行われることが示されているのだそうです。

ランチュエウェイのアンで後ろに下がる動作では、後ろに下がりながら(退)、相手を飲み込む気持ち(呑)で、相手よりも大きくなり、気は登って(昇)、手は広がって(開)いきます。また、両手を下げて前に押し出すところでは、身体は前に(進)、気は下がって(降)、手は合わさって(合)、息は吐きます(吐)。

 

これらの組み合わせは、あらゆる動作で出てくるので、意識して練習することが大切だと教えられました。