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64.透明感

 私たちは、ただ止まっているだけと思っていても、止まっていることのために力を使っているようです。その力を抜くことが大切であり、力を抜くと、体の中を何かが流れているように感じることが出来るようになると先生は言われました。身体の中を流れているものを緊張が止めているので、緊張を解いてやることが大切であるということのようです。緊張を解いてやると、何かが流れていることを感じることができるようになるということで、私たちは、簡化24式の「起勢」から「白鶴亮翅」までをゆっくりと動き、動きの止まる一瞬をとらえて力を抜く練習をしました。動きの止まる一瞬は、思っていたよりも沢山あり、その度に力を抜き、緊張を解くという動作は大変でした。しかし、動いているうちに掌がモヤモヤとしてきて、わずかな時間の動作でしたが、終わった時には掌が赤くなっていましたし、ドキドキと脈を打つような感覚もありました。これが何かが流れている感覚なのだろうかと思った次第です。

 そして、先生は「動作に透明感を持たせなさい」と言われました。最初は意味が分かりませんでしたが、「これと反対の言葉は[わざとらしい]という言葉だ」と言われ、[わざとらしい]とは、やる気を見せていることであり、それが消え自然に動いているように見えるようになることが「透明感があること」であると説明されました。ほど遠い世界だなと思いましたが、そうなれば気持ちがいいのだろうなとも思いました。

 先生は自然な動きの例として、「鯉と波紋」の話をされ、映像を見せてくれました。鯉はただ自然に泳いでいます。そして水面には鯉が泳いだことによるきれいな波紋がありました。鯉はきれいな波紋を作ろうとして泳いでいるわけではなく、自分のしたいことをしているだけです。私たちの太極拳も、本来の相手と戦う動作をすれば、それは「透明感のある」美しい動きになるということだと思いました。

 

また、先生は、上達ということに関して、次のような一連の言葉を教えてくれました。

  久練為熟(久しく練習すれば熟練してくる)

  久熟為巧(久しく熟練すれば巧みを為すことができる:

       「巧」とは細かなところまで工夫できるよう

       になること)

  熟能生巧(熟練すると巧を生むことができる:

       「巧を生む」とは工夫する余裕がでてくるこ

       と)

  巧能生精(巧みが精を生むことができる:

       「精」とは磨き上げてきれいにすること)

  

 「透明感」と「精」とが繋がってくるのかなと感じました。