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68.回りながら動く

先生は「意気君来 骨肉臣」という言葉を白板に書いて、その意味を説明されました。「意」とは「心の音」である。「心に流れ入ってくる」という意味でもある。「君」とは天と人々をつなぐものであり、上下の調和をとる意味もある。したがって、この言葉の意味は、「心に何もない状態で、心に入って来る全てのものに従って、身体を動かす」という意味になる。とのことでした。

 

 まず、起勢の時の両手を挙げる動きをしながら、自分の身体がどのように動いているかを自分の感覚として捉える練習をしました。両手が前に出ていくにつれて、上体が少しづつ後ろに動くことを感知しました。この動きは、両手が前に出ることで、前側が重くなるので、身体の中心を保つために自然に上体を後ろに動かしバランスをとるために、身体が自然にとっている動きであるということをおそわりました。次に、先生は起勢の動作を始める前に、体重を前足に掛け、足の指先に重心がかかるような姿勢を取らせ、起勢の動作を私たちにさせました。すると、両手が下向き斜め45度くらいに上がると、それ以上手を挙げることが出来なくなりました。これは、それ以上前側に重さがかかると上体を保てず、前に倒れてしまうので、身体が自然に手が動かないようにしているためであるとのことでした。次に、先生は、起勢で両足を開いた状態で、踵に重心が来るようにさせてから、両手を頭の上まで挙げるように指示しました。しかし、両手は肩の高さを過ぎて上方45度くらいに上がると、それ以上は上に挙げられなくなりました。これは、これ以上手を上げると、先ほどとは逆、身体が後ろに倒れてしまうので、身体が自然に手を動かさなくしているためであるとのことでした。これらのことから、私たちは、体重は常に身体の中心に置いておかなければならないことを学んだのです。そして、そのためには、力を抜いて、重力にあらがわない動きを心がけねばならないことを学びました。そして、そのためには、重心がどこにあるかを常に意識し、重心を軸にして体を回転させることが大切であることを学びました。

 

これらの動きで、手を前に出すことで、重心がかなり前に移動することを実感しました。雲手では、両手を前に出したままの動作になりますので、この身体の中心をしっかりと把握し、この中心を軸として体を回転させることが大切であると教わりました。手が前に出ている時の中心を掴むのが難しく、それを軸にして体を回すのはもっと難しいことを実感しました。先生は「回りながら動くのが太極拳である」と言われましたが、ただ回るのではなく、軸を作って回るというのはとても難しいことでした。