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71.背中にフトン

私達の身体は、たくさんの関節でつながっています。この関節がスムーズに動くことは、私たちが生活するうえでとても大切なことです。関節をスムーズに動くように維持することによって、関節に負担をかけず、骨に負荷を与えて骨密度を維持することもできるそうです。年をとっても、骨密度が今より悪くならないようにするという意気込み、目的を持つことが大切であると先生は言われました。常日頃、意識して関節を使い、緩めることが重要です。

 

特に膝は歩く上でも大切な関節で、特に意識していることが求められます。膝は、股関節とくるぶしの中央にあるとき、力を抜くことが出来ると先生は言い、膝が中央にあるときの膝の動く範囲と中央にないときの膝の動く範囲を実感させてくれました。力を抜くと膝は自由に動きます。「関節要鬆」という言葉があるそうです。膝だけではなく、全身の関節を緩めなければならないということです。この全身の中には心も含まれているというのは意外でした。

 

先生は「心平気和」という言葉を教えてくれました。これは心が平であれば、気は和むという意味です。私たちが一番安らかで伸び伸びしているのはどんな時でしょう。それは寝ている時です。「中正安舒」という言葉も示し、これは身体が傾かないで真っ直ぐであり、安らかで伸び伸びしている状態であると説明されました。寝ている時にはこれが実現できている(本人は知りませんが)のに、起きて動いている時にはこれが出来ていないようです。

 

また、先生は「太極拳忌三動」ということばがあるといい、「三動」とは、意動、主動、乱動であるといわれました。「意動」とは意識しすぎること、「主動」とは、自分から主体的に動くこと、[乱動]とは自分勝手に動くことと言う意味のようです。いずれにしろ、動こうとすると力が入るので、その力を抜いて、寝ている時のようになりなさいと言われました。太極拳の動きの中で、いつも背中に布団があり、寝ている時のようにその布団にもたれてゆったりと動くという意味でした。

 

 前回は、背中に舵を着け、方向を変えるのは背中で行うのだと教わりました。今回は背中に着いている布団にもたれてゆったりとすることを教わりました。太極拳において、背中がいかに重要であるか、逆に日常生活の中でいかに背中を無視してきたかを思い知らされました。