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72.自然に法る

先生は、政府が言いだしている「ムーンショット研究開発」ということから話を始めました。この研究開発は、革新的な研究開発の為、同じテーマで複数のチームを作り研究させるというもので、テーマとしては、「人工冬眠:一週間程度冬眠させ、手術の準備をする」、「台風回避:台風の進路を変え、日本に上陸させないようにする」などがあるそうです。特に台風の進路を変えるというようなテーマは自然をコントロールしようとする発想で、これはダメであると言いながら、先生は次のような老子の言葉を説明されました。

「人法地、地法天、天法道、道法自然(人は地に法り、地は天に法り、天は道に法り、道は自然に法る)」。意味は、人は地勢に従って畑を耕し、地は、太陽、月、四季という天に従って樹木を成長させ、天は道という秩序に従ってうごいており、道はおのずからそうであるように(他から力をうけることなく)動くということ、だそうです。私たちも、最終的には道がそうであるように行動しなければならないということです。

太極拳の動きにおいても、自然に随うように心がけるべきであると言われました。私達は、壁にもたれて立ちました。背中、腰を壁につけ、膝を少しゆるめて、壁にもたれて立ったのです。その時の身体のゆるみ具合を感覚として覚えておくように言われました。この時の姿勢は、背中、腰がゆったりとして楽であり、胸や顔は少し上向きでした。そして足のつま先が正面を向いていました。先生はこの状態を維持したまま、壁から離れて立つように言われました。途端に背中が緊張して、身体が硬くなるのを感じました。この状態で、壁にもたれていたときと同じようにリラックスすることが「立つ」姿勢であると先生に言われました。「立つ」だけで大変です。

 

更に一つ、どのような動きの中でも身体が片足になった時には、軸足のつま先の方向に顔を向けることを学びました。動きの途中であっても、片足のときはつま先の方向に顔を向け、両足になったら顔を動かすようにする。これを意識して、簡化24式を行いました。我ながら、こんなに動きが鈍くなるのかと思うほど顔の方向を意識して動くことは難しいものでした。練習をして、このような基本動作が自然にできるようにしなければ、難しい動作を教わってもそれが出来るはずがないと思いました。