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73.動中求静

 先生は、胴体の力を「立つ」ことに使わないようにすることが大切ですと言われました。人間の身体を骨の積み重ねと捉え、骨を重力に逆らわないように組み上げれば、胴体の力を「立つ」ことのために使わなくても良くなるということです。骨の組み合わせが傾いていると、倒れまいとするために胴体の力を使うようになります。そうすると胴体は固くなり、手足を自由に動かすことができなくなるのだそうです。骨の組み合わせだけで「立つ」ことが出来るようになれば、胴体(体幹)には力がはいらず、柔らかくすることができるのです。そうすると、手足を自由に使うことができるようになるということです。

 私たちは、このための練習として、太極拳の動きをしながら、片足になった時に、顔を軸足のつま先が向いている方向に向ける練習をしました。それだけをしているときは比較的うまくできたのですが、簡化24式をしながらこの点に注意しようとすると、手の動きに顔を向けることができなくなり、とても不自然に感じました。この時、先生は「動中求静」(動いている中で静を維持するようにすること)を説明されました。それは、身体の軸を動かさないで手の方向を見るやり方です。通常、身体の横にある手を見ようとすると、少なくとも首から上を捻じって顔を手の方向に向けます。こうすると、首のねじれに引きずられて肩や胴体もねじれが出てきて、軸足で立つことが難しくなります。そこで、先生は首を捻じらないで、手の方向を見る方法を教えてくれました。それは、頭蓋骨だけを回すことです。頭蓋骨は、頸椎の先端に乗っているだけで、頸椎を動かさないでも左右45°程度は回すことができます。手を見るために頭蓋骨は動かしても、頸椎が動かなければ、その下の体幹は動きませんので、軸足に乗った胴体がグラつくことはありません。これも「動中の静」のひとつだということでした。

 

 簡化24式を行いながら、頭蓋骨だけを動かして手を見る練習は、とても難しいことでしたが、軸足がグラつくことがないことも時々実感できました。これから、たくさん練習をして、自然に軸足を安定させながら表演できるようになりたいなと思いました。