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75.自分のクセを見つける

気功で腹前にボールを抱えるとき、指は天井から糸で吊るされているようにイメージすること。これにより、手首、肘、肩の関節から力が抜ける。頭も天井から糸で吊るされていると思うと、背筋が伸びて、脊椎の間が広がる。肩から力が抜けて体鬆ができる。

 

 先生は次のようにいわれました。「人は自分の姿勢を正しいものと思っている。たとえ、実際には曲がっていても、頭では真っ直ぐに立っていると認識しており、曲がることにより生じる不必要な力が身体のどこかにかかっていることに気が付かない。他人から指摘され、修正されても、それは自分にとっては違和感があり、正しいとは思えないので修正することはしない。こうして長年をかけて、身体が曲がってしまい、痛みを生じるようになって初めて姿勢が正しくなかったのだと思うようになる。」

 

 太極拳を習っている私たちは、一つ一つの動作の中で正しい姿勢を求めて工夫するようにしなければなりません。例えば、右足の片足で立つときのことを考えて見ましょう。右足片足で真っ直ぐ立つためには、右手を横に出して左右のバランスを取らなければなりません。それは、左足を含めた左半身が右足の左側にあるので、それに見合うものを右側にも作る必要があるからです。この調整を怠ると、左側の重さに耐えられるように身体を傾けるか、力を入れて支えるようになってしまいます。そしてこの動作は、繰り返されてクセとなり、意識の外に出てしまいます。こうなると、自分では、身体を傾けているとも、力が入っているとも思わないので、異常と感じることもなくなってしまいます。私たちは、常に、鏡などを利用して自分の姿を客観的にみて、身体のクセを見つけだす習慣をつける必要があります。身体は既にクセがついていると考え、機会をとらえて自分を客観的に観察するようにする必要があります。また、同時に、異常な状態にある姿を見つけだす能力も磨かなければなりません。

 

 先生は、雲手における手や足の動きを、時計の針の位置に例えて次のように説明してくれました。

 0.右手が上で、右に回転を始めるところからスタートし

   ます。

 1.身体の回転に合わせて、左足の踵を上げて行きます。

   この時、左股関節をしずめるようにし、左膝を前に出

   すようにします。

2.右手が2時、左手が4時の位置に来たら、身体回転を

  止めます。

3.右手を下げ、左手を挙げて両手が3時の位置に来るま

  でに、左足をあげつま先を地面から離します。

 4.更に両手を動かし、右手が4時、左手が2時の位置に

   来るまでに左足を動かしてつま先をつきます。この

   時、右手の掌は水平を維持しており、指先を下に下げ

   てはいけません。

 5.身体を逆回転させ、左手が12時、右手が6時に来た

   時、左足踵を着けます。

 

 

 このように、雲手の動作を細かく学んでいくと、これまでの自分の動きが、その時その時で異なっていたことや、特に、下した手が4時の位置に来た時にすぐに指先を下にする癖がついていたことなどに気が付きました。一つ一つの動きを丁寧に復習し、自分の動きを観察する必要を痛感しました。