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76.歪

  先生は、首、肩、腰などが痛くないようにすることが大切であるということから、次のようなことを教えてくれました。

 人の身体は、傾けば、傾いた状態でも立っていることができるように、身体のどこかに力を入れているのです。これにより体は歪みます。「歪」という字は  「正しくない(不)」と書きます。正にその通りなのです。

 

 先生は「頭を立てること(真っ直ぐにする)が、真っ直ぐに立つ基本条件である」と言われ、頭を立てるには次の2つの方法があると教えてくれました。

 1つは、「頂ケイ(ティンジン)」という言葉で表されるものです。

 もう1つは、「頂頭ケン  (ティントウシェン)」という言葉で表されるものです。

これは、頭を上から吊るすという意味です。どちらも、頭が真っ直ぐになり、頭の上に重たいものを乗せる ことができるようになると言われています。

 

 「頭を立てること」について、下から突き上げる(頂ケイ)か、上から吊るされる  (頂頭ケン)か、どちらでも良いからトライしてみることと先生は言われました。そして、身体を支える力は最小限にすることが大切だと言われました。身体が歪むと、力が発生し身体に緊張が生じます。しかし、長い間、その緊張が続くと、人は、その状態に慣れてきて、緊張していることに気がつかなくなるのだそうです。身体の歪みを支えるための力は、最終的には腰に負担をかけることになるそうです。無意識に腰に入れている力を抜くことが大切です。このための一つの方法として、腰椎を動かす運動を教わりました。

 太極拳では、足を前に出すことが多いので、ほとんどの動作で、この運動ができるのです。足をあげる(これを「提腿(ティトイ)という」と、上げた方の腰は動きやすくなります。この腰を前に丸める(これを「斂臀(リェんトン)という」ことで、腰椎が動きます。更に、先生は、足を挙げる前に、頭を真っ直ぐにする  (「頭領(トウリン)」という)ことを追加し、この運動をすることで、姿勢が真っ直ぐになり、腰椎を動かせるようになると言われました。そして、「雲手」の練習をしました。頭を真っ直ぐにし腰を前に丸める(斂臀)、雲手はこの動作の繰り返し  でした。片側6歩ぐらいで、往復数回行いました。少し、腰の骨が動くように なった気がしました。