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77.坐腕

 腕というと私たちは肩から肘を通って手首までのことと思いますが、中国では手首のことをいいます。形として手首を曲げて指を立てるという動作をするときに、今までは手首の位置はそのままにして指先を上に挙げていく動作をしていました。坐腕はそれとは逆に、指先の位置をそのままにして手首を下に落としていくことにより指を立てる形を作ります。この動作が何故大切なのかを先生は次のように説明してくれました。

 

 身体の病気に応じて反応が出るところを原穴といい、12か所あります。6か所は手首に、残りの6か所は足首にあります。原穴というのは、体中にある、いわゆる「ツボ(経穴)」の大元になるところです。ここを刺激することは、身体中をもみほぐしているようなものです。いつでも、手首だけでも動かすことが大切ですし、病気などで自分でできない人には、看病する人や、お見舞いに来た人たちが、その人の手首を動かしてあげてください。太極拳では、動作の中で坐腕をすることで、原穴を刺激することができるのです。坐腕をすると自然に指が伸びていきます(「展指」といいます)。

 

 先生は、太極拳の動きの中で坐腕を行う例として、楼膝拗歩(ローシーアオブー)の動きを私たちにさせました。このとき、手の内旋、外旋のやり方について、次のように指導されました。手の中で虎口(フーコー)の内側で親指と人差し指の骨が分かれるあたりを意識するように言われました。内旋をする場合にはこの部分を押し込むように、外旋をする場合にはこの部分を手前に膨らますように言われました。そして、手を前に出すときに坐腕をするように練習を繰り返しました。

  

 私は、この練習を通して、楼膝拗歩という動作は左右の手が同期して動いていることに気が付きました。これまでは、左右の手が半分の時間差をもって動いていると思っていたのですが、その動きの中で同期している部分があることに気が付き、とても気持ちが良くなりました。