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82.グラデーション

 先生は「ピサの斜塔」の話をされました。傾いた塔を起こすにはどうしたら良いかと現地の人たちはいろいろと試みたが、その中で倒れかかっている反対側の土地を10年かけて少しづつ掘っていったことで、17年後に2度ぐらい傾きが戻ったというお話でした。日々の変化は微々たるものですが、その意識を持ち続けることで、目に見える変化になってくるというお話でした。

 また、先生は東山魁夷展を見に行かれたそうで、その感想をお話になりました。青を基調にした大きな絵を見てその色合いの変化に驚いたということです。大きな絵の中でも同じ色合いは微塵もなく、連続して変化する色合いに見とれたとのことでした。

 そして、「太極拳もまたしかり」と先生は言われました。この絵の色の変化のように、身体の動きの変化ができれば、こんなに素晴らしいことはないということです。身体の変化もグラデーションであるように心がけ実現に向けて努力することが大切であるということです。その具体的な方法として、身体を動かす時の意識として、「命門」と「腎愈」を意識するように言われました。身体を後ろに動かすときは「命門」を意識し、身体を回転させる時は「腎愈」を意識し、そこを少しづつ変化させることによって身体全体が動くように意識して身体を動かすことということでした。

 

 私たちは、前に進む動作、後ろに下がる動作を練習したあと、簡化24式を通して練習しました。24式がこんなに長く感じたのは初めてでした。一歩一歩の動きの中に沢山の変化を意識することはとても大変でしたが、片足に乗ることもゆったりできましたし、前に出す足も今までよりも少し広く出せたように感じました。こうなると、練習あるのみですが、その前にこのような意識を持ち続けることの重要さを感じた練習でした。