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116.情景合一

 新年最初の練習であったためか、先生は儒教のお話から始められました。

 

 「修身、斉家、治国、平天下」という言葉を白板に書かれ、天下を平らかに治めるには、まず自分のおこないを正しくし、次に家庭をととのえ、次に国を治めて次に天下を平らかにするような順序に従うべきであるという意味であると説明されました。その根本にあるのは人と人のつながりを大切にすることであると述べられ、太極拳を練習する私たちはその前に、心と身体を太極図のように相互に関連しながら発展させるように心掛けなければならないとお話されました。

 

 では、どうすれば、心と体の関係を理想的な状況に実現できるのか。心の中は人工的であり、肉体は自然である。この心と体を一体化するためには、心を自然にするしかない。「情景合一」という言葉も教えてもらいました。「情」は心の中の景色、「景」は外部に見える景色。それが一つに合わさる(合一)という意味でした。太極拳は多くが雲、水、川などの自然の動きを目指しているので、それらを良く観察して、心がそれに近づくようにすることが大切だと強調されました。

 

 身体の中で争いが起こるのは、体の中で不公平が起こるからである。特に体の前と後ろでは後ろの方の負担が大きい。体の前後の負担を公平にすれば、地球に対してまっすぐになり、全身に重力を感じるようになる。その重力に任せるようにすると、体が地面に入っていくように感じる。これを「入地」という。と

 

 先生はお話されました。私には、ほど遠い世界だなと思いながら、もしそのような感覚を感じられるようになったら、太極拳がもっと楽しくなるのだろうなと新年に相応しい遠く楽しい世界を教えてもらいました。

  

 更に、体の左右のバランスがくずれると体は回転するとお話され、それを実体験するため、8式太極拳を、バランスのくずれと自然に生まれる回転の動きを感じるように、ゆっくりとした動きで行いました。これまでは体を動かしていただけのところが、バランスがくずれるため自然にからだが動いていることを感じるのは、とても新鮮な感覚でした。「何を今さら」と言われそうなほど、これまでは、自分で動いて、自分で支えている動きであったと感じました。