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86.ボール、赤ちゃん、魚

両手で体の前につくる空間の中心と、自分の身体の中心は常に一致しなければならない。これは身体のバランスを崩さないためにも大切である。

 

三節という言葉がある。この時「節」とは、「関節」のことを言うのが一般的であるが、「環節」をいうこともある。ここで「環」とは、関節と関節の身体の一部分という意味である。例えば、腕の関節は、肩関節、肘関節、手首の3つの関節になるが、腕の環節は上腕分、前腕、掌という3つの環になる。

また、曲がらないところも3つに分けることがある。例えば、手は、指先、掌、手首の3つに分け、顔は、額、鼻、口に分けたりもする。

 

私達は生活の中で無意識に体を動かしているが、いずれも目的を持って動いている。椅子に腰かけている状態から、棚の上にある本を取ろうとするときには、まず手を伸ばし、それでも手が本に届かなければ、膝を伸ばして立ち上がり、手が本に届くようにする。この動作は自然の動きである。自然な動きは、必ず末端から動きだしている。ところが、運動として同じ動作をすると、この動きが変わってくる。まず、膝を伸ばし、腕をあげ、最後に手を伸ばす。自然の動きとは全く逆である。太極拳は「運動ではない。太極拳は自然な動きができるようになることを目指している。」と先生は強調された。運動として捉えると、腕を動かすこと自体が目的となり、手のひらや指を動かすことを意識しなくなる。動く時は、末端から動かすことが重要であると気を付けたいものです。

 

 このような話の後で、先生は、手の動きとして、「抱球(パオ・チュウ):ボールを抱える」、「懐抱嬰儿(フアイ・パオ・インア):赤ん坊を懐に抱える」、

 

「懐抱魚頭、手捧魚尾(フアイ・パオ・ユィ・トウ、ショウ・ぺォン・ユィ・ウェイ):懐で魚の頭を抱え、手で魚の尾を捧げる」の3つを挙げました。そして、簡化24式の起勢(チー・シー)の後の、野馬分鬣(イエ・マ・フェン・ゾン)から手揮琵琶(ショウ・ホイ・ピー・パー)までを繰り返し練習し、いつこれらの手の形が現れるかを私たちに理解させようとされました。正直、まだ、良く呑み込めていない状況で終わってしまいましたが、これらの動きを作るのに三節の動きや自然な動きが絡んでくることも理解できたので、これからの練習だと思いました。