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92.溜臀

先生は、ダチョウの骨格図を示し、2本足で立つ動物の代表である鳥の足の構造はこうなっていると説明をされました。すなわち、人間と同じ構造であるが、股関節はほぼ胴体と同じ位置にあり、膝も胴体の羽で覆われている部分にかくれている。見た目には膝に見える後ろに曲がる関節は踵であり、足に見える部分は指である。鳥類は数億年前から進化して現在の形になっている。地上や水面に降りるときの足が受ける衝撃を後ろに曲がった踵で吸収している。人間の骨格とは大きく異なる。人間が止まろうとして力を入れる関節は膝であり、これは前に曲がるようになっている。大きな力がかかると耐えられなくなり壊れてしまう。猫の前足も鳥のようになっており、「邁歩如猫行(前に歩くは、ネコが行く如く)」という言葉も紹介してもらった。人間は鳥や猫と違って歩く時に後ろに曲がる関節は股関節しかない。前に曲がる膝を使って歩くのは危険を伴うと言うことを繰り返して強調された。

 

 そこで、先生は、私たちを真っ直ぐ立たせ、肩幅に足を開いた状態で、次のことをさせました。まず、重心をつま先に置いた状態で膝が動くかどうかを試させました。膝は楽に動きました。次に重心を踵に置いた状態で膝が動くかどうか試させました。膝は動ませんでした。この結果、膝が動かないように真っ直ぐに使うためには体重を踵にかけることが大切であることを知りました。

 

 

 次に、片足で立つ練習をしました。右足の踵に体重を乗せて、お尻を丸めると自然に左足の腿が上がってきます。このお尻がツルンと丸くなっている状態を「溜臀(リュウトン)」というのだそうです(以前に習った斂臀は、溜臀の状態を作る動作のことだそうです)。お尻が溜臀の状態になると左足の腿と胸が近付き、鳥のようにゆっくりと足を前に出すことが出来るようになります。右足の大腿部に力を入れるとバランスがとれて、楽に片足で立てると教わり、何回も練習しました。この歩き方をしながら、股関節に意識を移し、股関節を前後に動かすこと、左右に動かすことの練習をしました。さらに、この歩く動作をするときに手の太淵のツボで腰の環跳のツボを押さえるようにすると更に片足で立つことが安定してくるようになると教わりました。身体の構造から何が正しい動き方かを学んだ貴重な練習でした。先生は、きっと「今まで何度も同じことを言っている。もう、そろそろ身につけろよ」と思っているでしょう。