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94.順纏、逆纏

先生は、画家:千住博の絵画展で素晴らしい画を見てきたと話をされました。代表的なものとして、滝と崖の2枚の絵を見せてくれました。そして、絵の描き方に普通と違うことをしていると説明されました。滝の絵では、黒く塗った10数メートルのキャンバスを斜めにして上から白い画の具の入った水を流すのだそうです。そうすると、自然に水が流れて滝のようになるし、下の方では水が跳ね返ってできたしぶきなども利用して描き足されているということでした。そして、「自分以外の何かの力を借りる」ことの大切さをお話されました。太極拳で言えば、誰でも借りることのできる自分以外の力は重力であり、この力を使うことで、自分の力だけではできない自然な動きが出来るのだと言われました。

 

「太極拳における自然とは」ということで、「順勢」と「有序」と言うことばを教わりました。「順勢」とは、川の流れのようにルールに従った動きであり、流れに従った動きであり、総じていえば無理のない動きということになります。「有序」とは順序立っている、秩序だっているということで、動きには順序があるということでした。

 

 

人間は、原始時代から、今と変わらない身体で、猛獣たちのいる世界を生き抜いてきました。これは、手を使って戦い、足を使って相手をよけてきたからだと言われました。手の動きでは、掌を返す動きとして、これまで内旋と外旋をならってきましたが、掌と身体の関係で、体にまとわりつくように近づいてくる動きと、身体から離れていく動きがあることに意識するように言われました。近づいてくる動きを「順纏(ジュンテン)」といい、離れていく動きを「逆纏(ギャクテン)」ということ、更に、順纏のときは掌は外旋しており、逆纏のときは掌は内旋していることを習いました。加えて、掌が外旋から内旋に変化するときに片足に乗ることが多いことを教わりました。私たちは摟膝拗歩(ローシアオブー)の動きを使って、この順纏、逆纏の動作と片足に乗るタイミングの練習を行いました。そして、その動きが自然の流れで秩序あるものでなければならないと意識すると、身体が動かず、ぎこちないものになってしまいました。川のながれのように自然になめらかな動きができるようになるのは、いつのことやら。