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97.造花か本物か

先生は、まずブラックホールの写真撮影に成功したことを話題にし、「お天道様」と白板に書き、「これは何を意味するか」と質問されました。日本では太陽(お日様)のことをさしています。中国では「天地、自然のルール」という意味を持つと言われました。そして「太極拳は天の道の運動に良く似ている」とも言われました。宇宙は円運動をしています。ブラックホールを中心に全ての天体は回転運動をし、天体自体も自転という円運動をしています。そして私達人間の身体も円運動をするように作られていることを認識するようにいわれました。人間の身体は関節を軸にして動きます。この動きは関節を中心とした円運動です。人間の身体はこのような関節のつながりによっていろいろな姿勢をとったり、動きをしています。自然な動きの中には、無意識に統制された、身体のいろいろな関節が協調して目的の動きをしています。

 

私達が太極拳をするときに、このような動きをしているだろうか。先生は「造花と本物の花の違いを考えてみなさい」といわれました。私は、本物の花の場合生き生きとした命や萎れていく様を感じると思いましたが、先生は、自分の行っている太極拳の動作が造花か本物か感じ取るように意識しながら動作するように言われ、倒捲肱(ダオ・ジュアン・ゴン)の動きでその練習をしました。この動きの中で、片足に体重を乗せるときに、軸足となる足の股関節の上に丹田を乗せるように注意されました。片足にのる時にはどうしても力を抜いて自然に立つことが出来ず、本物への道の遠さを痛感しました。先生は「頭からではなく、自分の動きを観察して身体から感じるものに従って動くように」と言われました。更に、今の状態を良く観察しながら、少し先の動きを考えるようにすることが大切であると言われました。そして、「それが用意不用力だ」とも言われました。この言葉はこれまでにも何度も聞いてきましたが、動きの中でこれを求めていくことの難しさをつくづく感じました。