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104.小周天

今日、先生は次のような、難しいお話をされた。

 太極拳が他の体操と比べて異なるところは、相手がいることを前提として、相手に対してどう対応できるかを常に考えていることである。代表的な言葉が「残心」である。残心とは、技が決まった後も気を抜かないことである。倒れた相手が攻めてくるかもしれないと警戒を忘れないことである。

 自分の身体の中の力の流れを感じることが大切である。これには姿勢が大切である。「姿勢」とは、形だけでなく「勢い」を言う。エネルギーの動きが表れている。これを意識すると、骨の並びが正しくなる。

  

また、先生は「小周天」という言葉を紹介してくれた。

  これは、体の中の「気」の流れをいうもので、お尻から背中を通って上昇し、頭の上から体の前を通って降りてくるものである。そして三関(尾呂、夾脊、玉枕)という「気」の流れの悪いところがあるので、そこは意識して「気」の流れをよくするよう工夫しなければならない。体の後ろを上がる気の流れを「督脈」といい、体の後ろを下がる気の流れを「任脈」という。

  

私たちは、この「気」の流れを意識しながら、歩く練習をした。片足に重心を乗せる時に息を吸いながら体の後ろに気が上がっていくのを感じ、挙げた足を前に出して体重を移動するときに息を吐きながら体の前を気が下りていくのを感じる練習であった。最初は足の動きと呼吸を合わせることに気を取られ、「気」が動くところまでは神経が届かなかった。やがて、呼吸と歩くことの調子がわかるようになり、「気」の動きを意識するようにした。すると、今度は呼吸と「気」の動きは会うのだが、足の動きが合わなくなった。3つを合わせるのは難しいものだと感じた。この日は、満足できる動きはできなかった。