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108.背面の5つの点

 先生はラグビーのお話から入って説明をされました。「ラグビーでイングランドがニュージーランドに勝った。イングランドは鶴翼の陣をひいて、どこも突破させない陣形を取った。この陣形は太極拳の態勢にも参考になる。バイフーリャンチーの形を考えてみなさい。両手を広げて前に出し、腰は後ろに引いてどっしりと構えている。敵がどこから攻撃をしてきても即座に対応できる姿勢である。その考え方の基本は、自分が後ろに下がって実を守るということである。」

 

 さらに先生は次のように説明されました。「背中を緊張させると自律神経(副交感神経)が働かなくなる。背中を緩めることが大切である。自分の体が緩むと、自然に手が前に出ていき、相手のバランスを壊すことができる。背中をリラックスさせる練習のために簡化24式がある。太極拳の練習は、体を緩めることの確認のためにおこなっているのであり、日常生活の中でいつも背中をリラックスさせるようにここらがけ、実行してほしい。」

 

 さらに体の背中側の5つの点に注意するように次のようにお話をされました。「体の構造を見てみると、両手は肩甲骨につながっており、足は骨盤につながっている。丹田の裏側には命門があり、両手の付け根、両足の付け根と命門の5つのポイントを意識して後ろに膨らませるように練習しなさい。背中が後ろに膨らむと両手は前に伸びていきます。大きな円を描きやすくなるが、両手でつくる円を小さくするときも、手は伸ばして小さくするように心掛けてください。」

 

 「私たちの動きは、形を作るために動いているのではなく、何かしたいことのために動いている。したいことができることは、私たちの体が持っている機能です。ある機能を発揮するために体の各部は動くのです。両手はその機能を発揮するもっとも代表的な部位であり、これを大きく伸ばすことが重要です。手を伸ばすという機能を発揮するためには、体の後ろを膨らませることが重要になってきます。体の後ろが動くようになると、自分は安定した状態で相手を倒すことができるようになるのです。」

 

 私たちは、このようなお話を聞いた後で、簡化24式を通して行いました。5つの点を意識しながら体を後ろにと考えると、手の動きまで気が回らず、なんともぎこちない、とてもゆっくりとした24式になりました。それでも、ところどころで、背中を後ろに膨らませることで、体が安定して立てることも体験しました。これから、この意識を持ち続ければ、繰り返し練習することが楽しみになりそうに感じました。