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111.命門、腎兪、環跳

 気とは何か。先生は次の言葉を白板に書き、「腎」の働きについて説明されました。

 

「腎為先天之本」(腎を先天の本(モト)となす)

「腎者主水」(腎とは水をコントロールするもの)

「受五臓六腑之精而蔵」(五臓六腑の精を受け、これを蔵す)

「精化気」(精は気に化する)

「腎是生気之源」(腎は気を生み出す源である) 

 

 すなわち、腎は、五臓六腑の精を集め、全身の液体をコントロールすると共に、「気」を生み出して体内の全ての臓器とネットワークを作って、人体全体の状態を監視しており、人体ネットワークの中枢であるということでした。

  

 次に先生は、人体の図を見せ、腎臓のある場所を示されました。そら豆のような形をした腎臓が腰椎を挟んで左右にありました。前後の位置では、脊椎の中心よりも少し前の位置でした。さらに、腎臓のツボは腎兪(じんゆ)といい、命門の左右にあることも教えられました。これは、これまでも何度も言われたことでしたが、この日は特に丁寧に教えてくださり、腎臓を健康に保つための運動も教えてくれました。それは、両手の掌または甲で背中の腎兪のところを左右にこすることでした。

  

 そして、太極拳の動きの中で、命門と2つの腎兪と2つの環跳(かんちょう)をどのように動かすのかを教えてくれ、そのことに注意しながら歩く練習をしました。左足前の弓歩から右足前の弓歩までは次のようになります。

  1. 左足前の弓歩から、命門を後ろに引いて体重を少し右足に移動する。

  2. 左腎兪を後ろに引いて体を左回転させる。

  3. 左環跳を下に引いて体を沈め、体重を左足にかける。

  4. 左腎兪をさらに下に引いて、右足を引き寄せ、引き続き前に出して踵をつける。

  5. 右環跳を下に引いて、体重を右足にかけ、身体を前にすすめ弓歩をつくる。

  この後、簡化24式を通して行いましたが、5つの点の動きに気を取られ、これまでにないほど、ぎこちない動きとなりました。5つのツボの動かしかたを繰り返し練習しないと、太極拳の歩き方はできないと実感しました。