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117.命門后撑

 人間は皮袋に水が入っているようなもので、そのままにしておけば、自然に立っている。筋トレをして筋肉をつける必要はない。筋肉は生活の必要なだけあればよい。先生はこのようにお話をされ、腰椎の画像を見せてくれました。そして腰椎の後ろ向きに飛び出している突起の先端がまっすぐ垂直に並ぶようにするのが正しい姿勢であると言われました。二足歩行の動物として、ペンギンとカンガルーの骨の構造の映像も見せてくれました。両方ともしゃがんだ形で立っており、腰椎は後ろに丸く膨らんでいました。人間だけが腰椎を前にむけて反らしているようです。これが腰痛の原因であると分かりました。

  

 先生は、次のように言われました。「命門の後ろに棒が着いていると思いなさい。その棒で命門は後ろに引っ張られている。右に回りたい時は、その棒が左後ろに命門を引っ張る。回転した後その棒は引っ張る力を緩めるので、腰を右に移動させることができる。」私は、以前先生からフォークリフトのお話を聞いたことを思い出していました。フォークリフトは後ろにハンドルがあるので、後ろを動かすことで方向を変えているというお話でした。命門の棒は回転が終わった後に体重を回った方に移動するところまで入っているので、動きがスムーズになると思いました。

  

先生は「刻々留心在腰間」と言われ、動作の一刻一刻で命門を後ろに保つことに心を配りなさいと言われました。命門の後ろの棒を意識しながら、私たちは簡化24式を通しました。初めはぎこちない気持ちでしたが、次第に動きが滑らかになり、体の前に大きな空間ができる感覚を覚えました。今までにない感覚で、この空間で相手と戦うのだなと思いました。これまで、前傾であった上半身もまっすぐに立てていたのではないかと思いました。