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1.腕の付け根

 「腕の付け根は肩である」と思っている人は多いが、これは間違いである。腕の付け根は、鎖骨の首筋に近い方の先端(グリグリがある)である。鎖骨は、前にも後ろにも上にも動くが、この先端は全く動かない。付け根である証拠である。

 このグリグリは「胸鎖関節」と呼ばれているが、ここでは、鎖骨の付け根という意味で「鎖骨根」と呼ぶことにする。鎖骨根が腕の付け根だとすれば、腕を前に出すとき、肩を鎖骨根より前に出すことが出来る。即ち、指先は今までよりも少し上まで届くようになる。

 腕を上げるときも、肩は鎖骨根よりも少し上に上がるようになり、指先は今までよりも少し上まで届くようになる。

 この「少し」とはどのくらいか、それは鎖骨根と肩の位置関係による。肩を手の伸びる方向へどこまで出せるか、それは、肩関節を覆っている三角筋の力を抜き、人体で最も面積の大きい広背筋をはじめとする体幹の筋肉をしなやかにすることができているかによる。

 また、気功の無極樁のように手で円を作るとき、肩から先の腕と手だけで作れば、「円」は作れない(両肩の間は直線になる)が、鎖骨根から肩までの間も円の作成に加われば、完全に近い円を描くことが出来るようになる。

 手を動かす動作において、鎖骨根から腕がのびていることを意識することが、動作の滑らかさ、形の美しさ、その力強さの上からも重要である。腕だけのピッチングと身体で投げるピッチングの違いと同じである。