「開闊」とは、広々としているという意味、「胸懐」とは胸の内という意味ですが、「胸」は肉体的な意味の胸を指し、「懐」は心の内と言う意味がありますので、心身ともに胸を広々とさせるという意味になります。
太極拳は、身体全体に気を巡らせ、気の行くところには血液も届くことから、心身の機能を高める効果があるのです。しかし、太極拳の基本である「心静体鬆(シン・ジン・ティ・ソン)」が守られていないと、全身に血液がスムーズに流れなくなり、病気になることも起こります。
この「心静体鬆」は、運動を始める前も、運動をしている間も守らなければならない状態です。この状態を維持する基本的なことは、身体が安定していることで、身体が安定していない時、「心静体鬆」にはなれません。これをもう少し詳しく見ていくと、次の6つの言葉で表される状態があります。
1.状態
静(ジン) :安静な状態にある
穏(ウェン):穏やかで落ち着いている
(=安定な状態)
鬆(ソン) :緩んでリラックスしている
2.動き方
軽(チン) :軽やかに
柔(ロウ) :柔らかく
緩(ファン) :緩やかに
後半の3つ、軽、柔、緩の反対はそれぞれ、重(チョン)、剛(ガン)、疾(ジィ)ですが、これは、太極拳では、求めてはならないものです。
「有心求柔、無為成剛(ヨウ・シン・チュウ・ロウ、ウー・ウェイ・チェン・ガン)」という教えがあります。これは、「心を込めて柔らかさを求めれば、何もしなくても強くなる」という意味です。
太極拳を行ううえで、この6つを心がけることが大切ですが、「穏」ができなければ、他の5つは達成できません。「穏」には、落ち着き、安定という意味があります。「穏」を手に入れるには、「シャボン玉を膨らますときのように」緩やかに優しくゆっくりと動作することをこころがけるとともに、自分の身体の中心が、今どこにあるか、しっかりと足の上に乗っているかを確認することを習慣づけることです。片足のとき、自分は軸足の上にずっといると意識することです。
身体は常に現在のことに対応していますが、頭はいろいろなことを考え、ほとんど現在に留まっていることができません。「今」を心にとどめる練習をすることが大切です。