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7.気が澄むまで

 太極拳の起勢の練習を繰り返していることを想像しましょう。両手を前に出し、上に上げて行きます。そこで一旦止まって、今度は手を下げていき、それに合わせて腰を沈めていきます。手が下まで来たら、再び手を上げて行き、それにつれて腰も高くなっていきます。これを繰り返します。

 この動作の中で、手の動きと腰の動きのどちらが先に動き出すのが正しいでしょうか。普段の生活の中で、テーブルの上のコップを取るとき、まず手が動くでしょう。起勢でも同じです。手が動き出してから体がそれについていきます。この時、手が動き始めるほんの少しの時間だけ息を吸い、その後の時間はゆっくりと息を吐き続けます。

 この起勢の動作の動きが止まるとき、即ち、手が上に上がりきった時と、下に下がりきった時です。この時、全身の力を抜きます。自分の気が済むまで。

これは、他の動作でも同じです。片足で立つとき、および、それぞれの動作の定式(定勢)のときに、気の済むまで全身の力を抜いていきます。それが、次の動作に必要な力を生み出すからです。力の抜け切っていない筋肉からは新しい力はでてきません。筋肉は一つの仕事しかできないからです。今までの仕事の途中で他の違う仕事には取り掛かれないのです。

 濁った泥水も時間をかけて静かに置いておくと、濁りの基となった土が下に

 

沈んで上には澄んだ水だけになります。動作の定式では、動作を最後までやりきることという意味で、このように水が澄んできれいになるまでゆっくりと待つという「気の澄むまで」力を抜いていくことが求められています。