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12.腰を中心にして指で動け

 「其根在脚 腰為主宰 行於手指」(その根を足におき、腰を主宰となし、手指において行う)という言葉があります。重心は踵に置いて、腰を中心にして、手や指を動かせという意味です。

 私たちは、動作の形に気をとられ、一番重要なことを忘れてしまいがちです。私たちが立っていられるのは、どこかで重心を支えているからです。どこで、重心を支えているのかを意識しないでいると、いずれ、不要な負担をかけられていた身体の部分は悲鳴を上げることになります。重心は踵で支えなければなりません。踵に至る上部は、骨であり腹圧です。決して背筋や腹筋ではありません。筋肉は縮むか、緩むことしかできません。従って、関節を挟んだ2つの骨の両端で1つの筋肉につながっている場合は、その関節は、筋肉が働く度に関節を押し潰す力を受けているのです。腰椎などはその代表例で、背筋を強め、背筋で体重を支えようとすると、その度に腰椎の関節を押しつぶす動作をしていることになるのです。

 腰を中心にするとは、腰をリラックスさせることです。体を前に出そうとするとき、片足のままで体重移動も伴うような動き(通常、私たちが歩いている状態です)をしようとすると、腰は緊張します。体重移動をしないで足だけをだせば、腰はリラックスしたままの状態を保つことができます。両足が地面に着いた状態での体重移動は腰を緊張させることはありません。これが太極拳の足の運び方です。

 「一通百通」という言葉があります。1つのことに通じれば、100のことが分かると言う意味です。この腰をリラックスした状態で動くことができるようになりましょう。そして、動くのは手指です。手が今どこにあるのか、腰との位置関係はどうなっているのか。このようなことを、一つの動きの中でも何回も考え正しい位置関係、正しい動きが出来るようになりたいものです。まずは、「起勢」の動きにおいて練習してみませんか。「站功」は立つ練習のこと、「鬆功」はリラックスする練習のことです。動作の練習だけでなく、このような基本の練習も大切です。1つ出来るようになれば、100のことが分かるようになるのですから、何か1つ、できるようになる努力をしましょう。