· 

14.足の虚実分明

 あなたの足の小指の爪は小さくありませんか。爪は指を守る為についています。役目を果たしている足の爪は大きくなり、役目があまりない足の爪は小さくなります。小指の爪が小さい方は、足の小指をあまり使っていないということです。

「三点確保」という言葉があります。登山をする人には命に係わる重要な言葉です。3つの点を確保していれば、重量を支えることができるということです。登山する人は、岩登りをするとき、両手と両足の4つの内、3つ(三点)を確保して、残りの1つを動かして進むのです。このことは、平地でも同じです。

「私たちは2本の足で動いていますから3点はない」と言う方がいるかも知れません。私たちは、片足の中に3点を作り出せるのです。すなわち、a:踵、b:親指の付け根の裏、c:小指の付け根の裏の3点です。私たちは、立っているとき、歩く中で片足になっているとき、この3点で体重を支えているのが正しい姿です。足の小指の爪が小さい人は、cの点をあまり使っていないということで、aとbだけで支えようとし膝や腰に無用の負担をかけているのです。

 太極拳でも同じですし、更に細かい注意が必要です。たとえば、左足が前の弓歩の状態から、右足前の弓歩に移る過程を考えて見ましょう。まず体重を両足の中央に戻し、右足の踵を上げて蹴りだしますが、この時の足の裏がどのように地面から離れていくかを見てみると、まず、踵が上がり(この時点では小指の裏と、親指の裏で右足にかかる体重支えています)、次に小指の裏が地面から離れ、最後に親指の裏が地面から離れるようにします。足の裏の3点を意識して動くことが大切です。

 左足前の弓歩から右足前の弓歩への移動の全体を示すと次のようになります。

[文章の後の( )内は呼吸の状況を示しています。]

①重心を後ろに戻し左右両足に体重を半々に懸ける。(吸気)

②右足の踵(a)を上げる。(呼気)

③右足の向きを左足と同じ方向に回転させる。(呼気)

④右足の小指側(c)を上げて右足の膝を左足の膝に近づけ、腰の回転と合わせて、腰、両足を共に左45°に開く。(呼気)

⑤右足を地面から離して(b)、左足に乗る。(吸気)

⑥右足を前に出し、踵(a)をつける。(呼気)

⑦体重を前に移動し、右足前の弓歩とする(c→b)。(呼気)

 

 一歩一歩の動作でも、足の裏の3点を意識するように努力しましょう。