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9.動と静

太極拳の動作の中には、動きの向きを変えることが頻繁にでてきます。45°、90°、180°など、いろいろな場合があります。このような向きを変えるときに、どの場合にも共通する一つのルールがあります。

それは「背中を軸にして体を回す」ことです。胸や肩を動かして身体を回そうとするのは間違いです。背骨を軸として、これが回転することにより、背骨の前に着いている胸や肩が動くのです。

「太極者動静之機」(太極は、動静の機なり)、「動之則分、静之則合」(これが動けば即ち分かれ、これが静まればすなわち合わさる)という言葉があります。太極拳では、動の中に静を、静の中に動を、見つけだすことだと言われています。体を回転させるときに、軸が背骨であると意識すれば、静からまず動き出すのは背骨のわずかな回転であることが分かります。それを、実際にできるようにするのが練習です。

また、体が動くときに、次の動作の終わりまでに一番大きく動くところはどこかを考えます。そこは、最初に動き出さなければ、身体の他の部分との調和が取れなくなります。例えば、簡化24式の閃通背(シャントンペイ)から搬欄捶(バンランチュイ)の搬(バン)に移るときの動作を考えて見ましょう。一番長い距離を動くのは左手です。すなわち、搬(バン)へ移ろうとしたとき、まず、背骨と左手が動き出そうとしなければなりません。これが「動」の機です。これを意識して感じるようにすることが大切です。また、搬欄捶(バンランチュイ)の捶(チュイ)が終わろうとするとき、足の位置、背骨の状態、腰や上体の位置、腕や手の位置や形はどうなっているか、全てが正しい位置、形をなしているかを意識しながら形を決めなければなりません。これが「静」の機です。止まっているときは「動」の機を意識し、動いているときは「静」の機を意識するのです。

 

とても難しいことですが、意識しながら練習しましょう。