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29.心臓の負担を軽くする

 私たちの身体は、心臓が全身に血液を送り、血液の中に含まれる栄養素と酸素を全身の細胞に届けることによって活動を続けることができています。

 心臓の負担は大変です。哺乳類の心拍数は、身体の大小や種類によらず、一生の間に15億回程度と言われています。心拍数の早い動物は短命で、遅い動物は長命だと言われています。太極拳は、その心臓の負担を軽くすることができるのです。筋肉を緊張させたり緩めたりすることで、血管を圧迫して細くしたり、緊張を解くことで血管を広げることによって、体内の血流をスムーズにすることで、心臓の負担を軽くしています。また、胴体や手足をねじることによって同じように血流をよくするようにしています。しかもゆっくりとした動作でこれを行いますので、動作に対する心臓の負担はほとんどないのです。

 

太極拳では複式呼吸を行います。この複式呼吸により、腹腔のポンプ作用により、腹腔内の血液を送り出し、つぎに吸いこんでくる作用によっても心臓の負担を少なくしているのです。また、体の動きの中では、「開合(カイフー)」という動作があります。例えば、手を広げていき次に手を合わせていく動作などですが、この動作の中で、緩やかな筋肉の収縮や解放が起こり、血管の圧縮と解放が繰り返されるのです。つまり、常に心臓を助けているということになるのです。こういうことにも、気を配りながら練習したいものです。