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16.如水

 上善如水:「善の上なるものは水のようである」というように、老子は言っています。

まず、水の特徴を考えて見ましょう。水は、

①自分の形を持たない

②自在に形を変える

③柔らかい

④重力に逆らわず下へ下へと流れる

⑤自分が汚れて相手をきれいにする

⑥水がなければ何も生きていけない

などの特徴があります。

次に、袋(ビニールとか皮の袋)に水を入れて封をしたものを考えてください。この袋の特徴はどんなでしょうか。

①袋には均質に圧力がかかっている

②袋の一部を押すと、その圧力は袋全体に伝わる

③袋の上に物を乗せることもできる。

 私たちの身体を考えて見ると、継ぎ目のない皮の袋に水を入れたもののようです。骨や筋肉があるので、袋と水だけではありませんが。太極拳で動くときには、この水の入った袋をイメージすることが大切です。「太極如水」、「太極拳流動如水」という言葉もあります。この言葉は、太極拳の動きは、袋に入った水を動かした時の動きのようにすることが大切と言っています。

・手を下すときは、水が上から下に流れるように

・手を上げるときは、水蒸気になった水が空に上がって

 いくように

・片足に乗るときは、足という袋に詰まった水の上に

 乗っかるように

・足を蹴り上げるときは、斜め上を向いた皮の袋に

 一気に水を注ぎ込むように

  ・動きは、袋の形を変えても安定している袋の中の水を

   動かすように

 

 水を運ぼうとすると、硬い器に入れるか、凍らせないと運べないと思っている方が多いようですが、古くは水は皮の袋に入れて運んでいました。私たちの身体という皮の袋は、姿勢が悪いと筋肉が緊張して中の水が流れにくくなってしまいます。正しい姿勢を保てば、袋の中の水を動かしても、緊張することはなく、柔らかいままで運動を続けることができます。正しい姿勢とは、積木が倒れないように、重心線を真っ直ぐに垂直にすることです。