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17.頂頭懸(ディントウシュエン)

太極拳の基本的な姿勢として「中正」があります。これは身体の軸を真っ直ぐにするということで、体幹を意識して真っ直ぐに保つことを言っています。

このとき、大切なことは頭の位置です。頭を足(踵)の上に保っていれば、片足になっても立っていることが出来ます。

 「頂頭懸、満身軽利(ディントウシュエン、マンシェンチンリー)」という言葉があります。これは、「頭のてっぺんを上に吊り上げれば、全身を軽やかに動かすことができる」という意味です。太極拳の動きの中で常に頭の位置を意識することが大切です。特に、片足になる前には、頭を真っ直ぐ上にあげて、身体の軸を意識するようにしましょう。軸が垂直になっており、頭がその軸を吊り下げており、その頭も天井から吊り下げられているように感じられるようになれば、軸は垂直になり、身体の緊張もとれて、自由に体が動くようになります。これを「自由、自在、自如」といいます。自分の身体が自分の思うままになるという意味です。

 身体の軸を意識し、軸を垂直に保つための練習方法があります。

①足を肩幅に開き足の向きが平行になるようにします。

(ここでは、南向きに立っているとします。)

 ②両手を肘を折って掌が肩の横に来るようにし、手のひ

  らを外側に向けます。つまり、左手は東を向き、右手

  は西を向きます。

  ③両手を伸ばします。

  ④伸ばした手を肘を折って縮めます。

以上が基本形です。次に、回転を加えます。

  ②で手を伸ばすときに、体を回転させます。ここでは左に回転させる場合を説明します。手を伸ばす動作に合わせて上体を左に回転していき、手が伸びきった時、回転を止めます。この時、上体は真横(東の方向)を、左手は北を、右手は南を向いています。更に、この動作に合わせて頭の回転を加えます。頭は上体(肩)より更に90°回転しますから、顔は北を向くようになります。この形ができたら、ゆっくりと元に戻し、南を向き、両手を下します。

右回転も同様にします。

 

これに近い動作は、練功18式の「転腰推掌(ズァン・ヤオ・トイ・ザン)で行われています。体をねじるのが目的ではなく、身体の軸を意識する運動だったのです。