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21.用意不用力

 太極拳では、「用意不用力(ヨン・イ、プー・ヨン・リー)」ということを動作の基本としています。これは、気は働かせるが、力は用いないという意味です。

 また、「一用力便是錯(イー・ヨン・リー、ピエン・シー・ツオ)」という言葉もあります。これは、一たび、力を用いたら、それは間違いであるという意味です。太極拳の動作をしている中で、力を使わないことはとても難しいことですが、気を付けて力を抜く練習をすれば、少しづつ力を持たない動きが出来るようになると言われています。例えば、両手をゆっくりと上にあげる運動を考えて見ましょう。まず、両手を肩幅に開いて、指先を上に向けて胸前に構えます。この時は、あまり力を使っている感覚はないと思います。次に、両手を10cmほど上げてみましょう。肩や腕に力が入っているのを感じるでしょう。この状態で、肩や腕の力を抜いていきます。力が抜けたと思えば、両手を更に10cmほど上げます。再び、肩と腕に力が入るでしょう。この力を再び抜いていきます。このような動作を繰り返すことにより、力を抜いた状態で両手を上に伸ばす動作ができるようになると言われています。練習しましょう。

 

 また、動作に気を付けることでも力を使わないで動けることがあります。太極拳では、片足で立つ動作が沢山あります。一歩、歩く度に片足になっているからです。この片足になるときに、自然に片足の上に重心がくれば、力を用いないで片足で立つことが出来るようになります。軸足の上に重心を持ってくるには、反対側の手を軸足の上に持ってくるだけで良いのです。これを意識すれば、自然に軸足の上に重心が乗るようになります。もっと言えば、軸足の上に重心が乗るまで待っていることです。反対側の手を軸足の上に持ってくることは自然に体全体を軸足の上に引き寄せているわけですので、その動作を続けていれば、自然に軸足の上に重心がのる時がくるのです。その時を感じ取れるかどうかは、練習次第ということになるのでしょう。軸足にしっかり乗れた時の安心感はとても気持ちのよいもので、一たび、軸足に重心が乗れば、その状態で両手ともう一方の足をどのように動かしても、軸がぶれることは起こらないので、ゆったりと動作をすることができるのだそうです。早く、そのようになりたいものです。