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22.伸張性収縮

 重たい荷物を両手で抱え、少し高い台の上に持ち上げようとするときのことを思ってみましょう。

 腰を落として両足を開き、両手で荷物を抱え、腰や太腿に力を入れて荷物を少し持ち上げます。そして太腿に力を入れて足を伸ばし、台の高さまで荷物を持ち上げます。この時の太腿(大腿四頭筋)は収縮して膝を伸ばしています。この時の筋肉の動きを「短縮性収縮」といいます。

 次に、台の上にある重い荷物を床に下すときのことを考えて見ましょう。重い荷物を持ち上げた後、台から離れてゆっくりと腰をかがめ、膝を折って荷物を下していきます。この時も太腿に力が入りますが、持ち上げるときとは違った働きをします。ゆっくりと筋肉を伸ばし膝を曲げています。この時の筋肉の働きを「伸張性収縮」といいます。

 また、台の上の荷物を持ち上げ、他の人が台を他の処へ動かす間、荷物を同じ高さで持ち続ける間も、太腿には力が入っています。この時の筋肉の働きを「等尺性収縮」といいます。

 このように、同じ大腿四頭筋が働いているときでも、異なる働き方をしているのです。そして、筋力の強さは、伸張性>等尺性>短縮性の順になっているそうです。

 階段を上がるときに使うのは短縮性で、降りるときに使うのは伸張性です。

この話を聞いて、家の階段を登ったり降りたりして筋肉の感じをためしてみました。あまり違いは分かりませんでしたが、降りるときに、軸足を縮めて、もう一方の足を一段下のステップに着けようとしたのですが、届かないのです。私はこれまで階段を降りていたのではなく、速度を調整しながら落ちていたのです。ステップの高さは18cmほどですが、つま先を着けるのがやっとで、体重を受け止められるだけの余裕はありませんでした。全く新しい発見でした。

伸張性収縮の力が最も早く衰えると言われていますので、階段を少しでも自分の力で降りられるように練習しようと思います。階段を落ちていては、いつか本当に下まで落ちて、けがをしてしまうでしょうから。

 

 なお、太極拳の体重移動(片足になるときも含めて)は、全て足を曲げながら伸張性収縮で行うべきですが、全身の動作より後退の動作の方がやりやすいので、倒捲肱(ダオジュエンゴン)の練習が良いようです。