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30.前の足のつま先

1.前の足のつま先

 力の出る方向は前の足のつま先の方向である。このため、膝とつま先の方向は一致させることが大切である。練功18式の中の「左右転膝(ズオヨウズワンシー)」という運動は、膝と目と鼻の向きを合わせる練習になっている。この運動では肘は一切曲げない。常に肘は伸びている。いかなる動作においてもつま先の向きを正しい方向に向けることが肝要で、練習する場合にはそこに注意を払い、身体も心もすべて一致させて動くことが肝である。

 

2.起勢の練習

 足を開いた後、両手を上げて行く前に背中を緩ませることが大切である。背中を緩め、肩の力を抜いて落とし、手を上げるのに合わせて上体を後ろに移動させ、重心線が動かず同じところにあるようにする。両手が肩のさまで上げれば、膝を緩め沈みながら肩、肘を緩めて下していく。両手が腹の高さまできたら動きを止める。このとき、手のひらは身体からかなり前にある。これは、体を沈めるに合わせ、上体が後ろに移動しているので、重心線の位置を変えないためには維持しなければならない位置である。ちなみに、このとき、両手を両足の横に落としたら、体は後ろにこけそうになるはずである。一方、楊式の起勢や収勢の時は、膝を沈めていないので、下した両手は身体のすぐ前にある。これは上体が後ろに移動していないからである。

 

3.十字手

 簡化24式の十字手で説明すると、両手を広げた後、両手を下からすくうようにして十字にしながら、左足に体重を移し、右足を引き寄せて肩幅に足を着く。そこから十字の手を胸の高さまであげ、両手の掌を返して掌外にむける。この掌を返すときに相手を下から上に押し上げる意識を持ち、持ち上げた後の形をしっかりと維持することが大切である。この形を作らないで収勢に移行するのは間違いである。