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34.真人之息以踵

 「真人之息以踵、衆人之息以喉」(真人の息は踵を以って行い、衆人の息は喉を以って行う)と言う言葉があります。太極拳では、息を吸うときは踵から吸う気持ちで行い、吐くときは、腰を通して踵に吐くように意識をするという意味です。息は短く吸って、長く吐くことが大切です。この呼吸法は、動作と連動して行うと理解しやすくなります。例えば、左足前の野馬分鬃から動作と呼吸を説明するとつぎのようになります。

  ①体重を後ろに下げて、両足に半々に体重をかけるま

   で:吸気

  ②身体を回転させボールをつぶして足の向きを変えるま

   で:呼気

  ③左足に乗って、右足を出し、踵をつくまで:吸気

  ④右足前の定勢まで:呼気

 

 踵で呼吸をする感覚を掴むためには、背骨の周りを柔らかくすることが肝要です。呼吸は胸で行いますが、肺には筋肉はありませんから、肺を取り囲む周囲の筋肉や骨を動かして、肺に空気をいれたり、出したりしています。肺を取り巻く筋肉や骨は、肺の前側だけではありません。胸式呼吸や腹式呼吸と言うのは前側の動きを言っています。呼吸はこれだけでなく、背中を後ろに膨らますことや、腰を後ろに膨らますことでも行うことができます。特に、後側の呼吸法は一般には知られていませんが、大切な機能です。後ろ側の呼吸をできるようになるためには、背骨やその周りの筋肉を柔らかくすることが大切です。先生は「テレビでもやっていた方法として」次のような練習を教えてくれました。身体を魚が泳ぐように左右に動かす練習です。

  ①肩幅に足を開いてまっすぐに立つ。

  ②肩の部分を、真っ直ぐ前に向けたまま、右に動かす。

  ③腰の部分を、回転させないで、右に動かす。肩の下に

   腰が来る。

  ④肩の部分だけを左に動かし、腰は動かさない。(くの

   字になる。)

  ⑤腰の部分を左に動かし①の状態に戻る。

  ⑥上記の②から⑤を左右を代えて行う。

  ⑦上記②~⑥の動きを繰り返す。