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39.舒緩(シュウフアン)

 「おもてなし」という言葉が、流行語として、日本文化の代表のように使われたことがありました。「おもてなし」とはどんなことでしょうか。辞書をひくと「心を込めた待遇」とありました。この言葉は、おもてなしをする側の表現だと思います。おもてなしを受ける側から見れば「家に帰ったような、くつろいだ気持ち」ということになるのではないでしょうか。

 

 「無微不至(至らないところは、少しもない)」と言う言葉を習いました。隅々まで気が行届いている状況をいうようです。このような状態に置かれたとき、私たちは、ゆったりと心安らかにしていることができます。このような状態を

「舒緩」というのだそうです。

 

 私たちの身体を考えた時、おもてなしをする側、される側は何でしょうか。

おもてなしをする側は心であり、される側は身体です。心が緊張しているとき、体がゆったりすることはできません。こころがゆったりとし、身体に対しても

ゆったりするように仕向けるようにすることで、体ははじめてゆったりとできるのです。心は身体に対しておもてなしをしなければならないのです。

 

 このためには、心はいつも体の状態に気を付けていなければなりません。身体が傾いていたり、力が入っている状態をいち早く感知して、修正しなければなりません。心は身体からの信号を敏感に感知しなければなりません。そうしなければ、とても身体にくつろいでもらうことはできません。

 

 運動をするときも、身体が舒緩の状態を保てるように動かなければなりません。錬功十八法の中の「扶膝托掌(フシトゥオザン)」という運動があります。

 

 これは、右手を左膝(または腿)の内側に着け、腰を沈めながら、左手を正面から頭上に上げて行く運動です。この動作では、手を上げて行くときに背中を反らしてしまうのですが、それは間違いです。手を上げるときに腰を落としていけば、自然に上体は起き上がってきて、背中を反らせることはないのです。「腰を落としてその動きにつれて上体が起き上がっていく」この動きは、身体を舒緩させた運動といえるということでした。他にも、普段、身体に無理をさせている動きがないか、細かくチェックしなければと思いました。